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【1】はじめに
 自然界には多くの“不思議”が隠されています。自然の多様性の中にも、規則性を見出すことができます。天体の運行、特に日周運動についての研究は、人類がその歴史上最初に手がけた科学的な観察(観測)のうちの一つでしょう。
 天球上の天体の運行を知ることは、古来より人々の生活と密接な関連がありました。季節による星座の変化は、種まきや収穫の時期の判断に役立ちます。方位を知る上でも必要不可欠でした。また、日周運動により、時刻や時間の経過を知ることもできます。惑星の独特の動きは、占星術に利用されたりもしてきました。今日、昼と夜の生活上の境界が薄れつつある中で、夜空への人々の関心も遠のきつつあるのかもしれません。しかし、そこには今もダイナミックな宇宙の営みが静かに続いています。
 夜空の星々に関心を持ち、その動きや特徴,不思議さに目を向けることは、まさに私たち人類の科学の歴史をたどる第一歩であると言えます。科学は、私たちの生活を、物質的のみならず、精神的にも豊かにしてくれるものです。私たちをとりまく自然の美しさや不思議さに触れ、正しい認識とグローバルなものの見方,考え方ができるようになることは、私たちのかけがえのない地球の姿に目を向け、守っていこうとする心情を育てるきっかけにもなり得ると考えます。
 このたび、T市小学校理科主任会様のお招きをいただき、太陽,月,星座(恒星)の日周運動の学習に役立つ教材の紹介をとの依頼をお受けしました。小学生にも簡単に製作ができるよう、材料の入手や学習方法について、なるべく困難を伴わないようにとの方針で考案させていただきました。ご参加の先生方や児童のみなさんにとって、学習の一助になりましたら幸いです。

【2】日周運動の特徴
 地球の自転に伴って天球が動いて見える現象です。原因が地球の自転なのですから、太陽も月も星座も、基本的には東の空から西の空へと移動します。しかし細かい点で見ると、月や地球の公転の影響で、位相(満ち欠け)や出没の時刻,季節変化などを伴い、学習上、留意が必要な場合も出てきます。ここでは、天体ごとの特長について簡単に把握しておきたいことを述べておきます。

1.太陽
季節により南中高度が大きく変動する。
  北緯36度の地点での南中高度
    夏至    :77.4度
    春分・秋分 :54.0度     この間46.8度もの変動がある。
    冬至    :30.6度
日の出,日の入りの場所も、それぞれ真東,真西を中心に、北寄り〜南寄りと変動する。
 (常に真東から昇り、真西に沈むわけではない。)
光が強烈なので、直接肉眼で見ることは避ける。眼球中のレンズにより太陽光が網膜に収束し、視細胞を損傷する。

2.月
夜間に観察する天体としては、最も身近な存在といえる。
月の公転に伴って地球,太陽との相対位置が変化するため、位相の変化(満ち欠け)が起こる。
日によって出没の時刻が変化する。
南中高度も日々変化する。

3.星座(恒星)
星座の形は変わらない。地球の公転に伴い、季節によって観察できる星座が移り変わる。
惑星は、毎日観察していると恒星の間を移動するのがわかる。

【3】教材の製作

 右の写真のように、覗き穴から直接天体の位置を確認し、記録をします。
 以前から教材として考案されていた手段ですが、アクリル板やTPシート等の透明板を使用したものは、周囲の灯火の反射や眼のピント合わせ,記録に使う筆記用具の制約などの関係で、思うような記録がとれないという致命的な欠陥がありました。そしていつしか、教科書会社の指導書や資料から姿を消してしまいました。
 今回製作する教材は、透明板に替えて網戸用の網を使用し、上記の弱点を克服しました。網の目から直接天体を目視できるため視認性がよく、記録データの処理も簡単にできるようにしました。(天体の位置の記録にはクレヨンを使います。)
 また、比較的簡単に手に入る材料で製作が可能で、組み立て・分解,持ち運びも可能にしました。これにより、学校で教材を製作し、家に持ち帰っての学習を可能にしました。
◎材料
・菓子の空き箱(菓子の詰め合わせなどに使われているもの)
  ※箱の縦横比が大きく異なるものは避ける。
・網戸補修用の網(菓子箱よりもひと回り大きめに切る。)
  ※黒色のものがよい。
・ダブルクリップ(10個)
・割り箸(1膳)
・ガムテープ
◎道具
・カッターナイフ
・はさみ
・定規
・ホッチキス(針は多めに)
・穴開けパンチ
◎観察時の記録用具
・クレヨン(白,黄など明るい色のもの)
(1)記録部の製作
@箱の底を切り抜く。箱の強度を保つために、箱の端から1cmほど内側を切る。
 (箱の大きさや強度によって、切り残す幅を考えて下さい。)
A箱の大きさよりも、ひとまわり大きめに、網を裁断する。
 (箱から2cmくらいずつはみ出すようにする。)
Bホッチキスで、網を箱に固定していく。
 (網がたるまないように、やや引っ張り気味にして固定していく。2人で協力して作業するとやりやすい。)
・まず1辺の中央を留める。 ・反対側の中央を留める。 ・4辺の中央を固定終了
・各辺の中央部から箱の角に向かって、2〜3cm間隔で固定していく。

・箱の角の部分は、網を折りまとめて固定する。
C箱の周辺をガムテープでひと巻きし、網のほつれ防止と箱の補強にする。
・箱の角にあわせて、ガムテープを貼っていく。 ・テープの余りは内側に折り込む。
・ガムテープを貼り終えたところ。
(2)台座部の製作
@台座に使用するふたに、切り込みを入れる。(いちばん右の仕上がり写真を参照)
・箱の角にハサミを入れる。 ・短辺の長さ4分の1のところにハサミを入れる。 ・切り込みを入れ終えたところ。
Aふたを折り曲げて、台座の形を作る。
・切り込みを入れた側を持ち上げ、折り目を付ける。折ったところをダブルクリップで固定する。向こう側も同様に固定する。
(3)組み立て
@(1)で製作した記録部を(2)の台座に取り付ける。固定にはダブルクリップを使用する。
・台座の立ち上げ部分に、記録部の箱を取り付ける。
・反対側も同様に固定する。
・割り箸を補強用の柱として取り付ける。(ダブルクリップで台座部に固定) ・割り箸の他端を、記録部の箱に固定する。(手前側にも同様の作業を施す。)
・取り付け終了の様子
(4)完成
@(1)で切り抜いた、箱の底部のボール紙から、下のような形の「のぞき穴」部分を切り出す。
上端の穴は、穴開けパンチで開ける。
A「のぞき穴」を台座に固定する。
・「のぞき穴」をダブルクリップで台座に固定する。
・記録部の箱と「のぞき穴」のボール紙の傾きを調整する。
・観察する対象に合わせて、記録部の傾きを変える。「のぞき穴」のボール紙は、記録部とほぼ平行になるように調整する。
・「のぞき穴」から真っ直ぐにのぞいた時、記録部のほぼ中央に視線が行くとよい。
(5)観察,記録の仕方
@方位磁針などを用いて、方位の確認をする。
A観測箱を水平な台や机の上などに置く。固定できるとよい。
B「のぞき穴」からのぞき、網を通して透けて見える星の位置を、クレヨンで網上に直接記録する。
 (このときスカイライン(景色の輪郭)を一緒に描き込んでもよい。)
CBの後、時間をおいて再度記録をとると、恒星の日周運動を記録できる。Bの記録とは違う色のクレヨンを使うとよい。
D記録部の箱を取りはずし、転記用の用紙上に置く。
Eクレヨンの記録の位置を、ボールペンや鉛筆で写し取る。(クレヨンの記録が網の上にあるので、ペン先が網目を通して直接用紙に届くため、記録がずれることは無い。記録をとった時刻ごとにペンの色を替えるとよい。)
Fクレヨンは、こすればある程度消せるので、再使用が可能。
(6)参考
この教材は、下の写真の要領で、分解,整理が可能です。
箱形に組み上げた後に、輪ゴムなどで外側から固定すれば、運搬も容易です。

 右の写真のように、ペットボトルを組み合わせることにより、太陽や月の動きの様子を手軽に記録できる装置を製作することができます。
 この記録器の特徴は、比較的簡単に太陽や月の観測,記録ができること。また、材料を入手しやすく小学生でも簡単に作れること。さらに、学習後の処分(リサイクル)が容易である点などです。
 運搬も容易にでき、破損の心配も無いので、学校で教材を製作し、使用方法をマスターすれば、家に持ち帰っての学習が可能です。
◎材料
・1.5リットルペットボトル            2本
   ※1本は炭酸飲料用がよい。
   ※コカ・コーラなどの特殊な形状のものは避けた方が無難。
・たこ糸
   ※水糸でもよい。細過ぎず、太すぎず。  約1m
・輪ゴム(普通の大きさのもの)         1本
・ゼムクリップ                 2個
・ビニールテープ(色つき,不透明のもの)
・方位磁針
・TPシート
・セロハンテープ

◎道具
・キリ(またはドリル φ2〜3mm)
・ハサミ

◎観察時の記録用具
・油性ペン または ラベルシール
(1)本体の製作
@ペットボトルの1本の底部とふたの中央に、キリでそれぞれ穴を開ける。
・ペットボトルを誰かに支えてもらうと作業しやすい。
Aペットボトルに糸を通す。
・糸の一端に輪を作り、ここにゼムクリップをつける。
・糸の他端を、ペットボトルの底の方から通す。

・さらに、ふたの裏側から糸を通す。
・ふたの反対側から糸を引き出し、輪を作ってゼムクリップをつける。
・ゼムクリップを輪ゴムでつなぐ。
(2)台座の製作
・台座にするもう1本のペットボトルの上部を切断する。

・ハサミを下から入れて切っていくと、切り口が曲がりにくい。
・切り取った底部に、方位磁針を取りつける。
(ガムテープを輪状にしてつけるとよい。)
(3)組み立て
・(1)で作った本体部分を、(2)の台座に差し込む。
・接合部分にビニールテープを巻いて固定する。
・1本目のビニールテープと平行に、3mmほど間隔を空けてもう1本ビニールテープを巻く。
(4)完成
・ビニールテープの上端に合わせてTPシートを巻きつけ、セロハンテープで固定する。

・本体部分の輪ゴムの反対側にTPシートの中心が来るようにするとよい。
・出来上がり
(5)使用方法
・見晴らしのいい場所を選ぶ。
・底部についている方位磁針で方位を確認し、輪ゴムの位置を北側にする。観察中に動かないようにしっかり固定する。

・方位磁針は正確に真北を指すわけではない。真北よりも約7度
ほど西にずれた方向を示す(偏角)。
・2本のテープのすき間から内部をのぞき、月と糸が重なる位置で視線を固定する。

・向こう側のTPシートに、ラベルシールや油性ペンなどを利用して位置を記録する。

・終了後、TPシートを取り外すと、日周運動のようすが記録されている。

※太陽の場合は直視は危険なので、反対側からペン先の影などを使って太陽の位置を記録する。(透明半球への記録の要領)