ウェーブ・ロック

 1992年12月26日。パース(Perth)から東へ約350kmのハイデン(Hyden)の街へと向かった。奇岩ウェーブ・ロック(Wave Rock)の観光が目的。サーファーが喜びそうな巨大な波がそのまま岩になってしまったような景観ということだが、実物はいかに……?
 前日パース入りした我々は、この日、西オーストラリアでの最初の目的地ウェーブ・ロックへ向けてレンタカーを走らせた。
朝8時20分頃、ホテルをチェックアウト。パース市街地を抜けてグレート・イースタン・ハイウェー(Great Eastern HWY)を東進。まもなく街並みも消え、内陸に入ったことを実感させてくれた。制限速度は100km/h。対向車もほとんど無く、もちろん信号機も無く、ドライブは順調に続く(と思ったのだが…。)。
 旅の頼りは手元のロードマップ。ところが、途中で道を間違え、やや遠回りをすることになってしまった。とは言え、そこは気楽なドライブ。その遠回りも楽しむことに。
 休憩をとろうと、道端にクルマを停めると、足元に何やらうごめくものが…。
みると体長30cmほどのトカゲであった。以前テレビで見たことのあるマツカサトカゲであると思われる。尻尾のほうも頭と同じような格好をしていて、敵の目を欺くための工夫と思われる。小さい体ながら、我々を威嚇して口を大きく開けて見せたが、その光景は何ともかわいらしかった。
 途中で食事をとったり、景色を楽しんだりしながらのドライブは、ことのほか時間がかかった。ようやくハイデン(Hyden)の町に到着した頃には、時計は既に14時を回っていた。
 やっとウェーブ・ロックに到着。内陸の砂漠地帯で14時頃というと、一番過酷な時間帯である。入口手前の売店で帽子を購入し、いざ中へ!
 ブッシュの中を小径が続く。やたらとハエが多い。それらを振り払いながらひたすら前進。
 やがて、目前に巨大な “波の壁” が。海岸に押し寄せる巨大津波のようなイメージ。ウェーブ・ロックというその名の通り、波頭が崩れる寸前に固まって岩に化けてしまったような、見事な景観。
 近づいて岩を見ると、岩質は花崗岩で、表面の風化はかなり激しい。この景観が形作られるまでに流れたであろう気の遠くなるような時間を思わずには居られなかった。
 ウェーブ・ロックは、ちょっとした丘のようでもある。脇から上部へ登ってみると、ゆるやかな傾斜が続く。その先には丸みをもった直径数メートルもの岩がゴロゴロしている。
 更に歩みを進めると、やがて貯水池のようなところに行き当たった。水の流れをせき止めたような、ダムに似た形。有刺鉄線と金網で立ち入りが制限されている。何に使われるのだろう? 畑の灌漑用か? 詳細は不明。
 頂上付近(と言ってもピークがハッキリしないが。)から北東方向を望む。どこまでも続く、乾燥した大地。
 「この方向に “エアーズ・ロック” があるんだ。」と、心は既に大陸奥地へと飛んでいた。

 1時間ほどの時間をかけて周囲を散策。我々はそのままパース(Perth)への帰路についた。20時30分、パース市内の宿を探しあて、チェックイン。往復800km近い超遠距離ドライブを体験した一日であった。
 

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