オーストラリアの星空 DIGITAL編

 2005年8月、勤務先の中学校の生徒を対象に実施された「国外研修派遣事業」の引率教員として、生涯4度目の渡豪。研修地は、Sydneyの北へ約100km。Gosford市郊外の Woy Woy という街。そのUmina地区にある、Brisbane Water Secondary College Umina Campus にお世話になった。生徒たちはすべてホームステイ。引率者は Ettalong地区に滞在。
 夕方以降の夜間はすべて自由時間。非常時に備えて携帯電話の電波の届く範囲での行動を心がけたが、幸いにも大きなトラブルは無く、南半球の「冬」の長い夜を連日屋外で過ごすことに……。

 上弦過ぎ〜満月近くの月明かりのある、あいにくの日程。それを承知のうえで、冷却CCDカメラと、改造一眼レフデジタルカメラを持ち込み、南天の天体撮影を敢行。さすがに広角系での撮影は困難を極めたが、オーストラリアの空の抜けの良さも手伝い、また望遠系でのデジタル撮影は比較的光害にも強く、期待以上の成果を上げることができた。


《使用機材の概略》
架台
  ・高橋製作所製P-2型赤道儀
    +南天日周運動対応改造HD-4モータードライブ
眼視観察・追尾確認用鏡筒
  ・高橋製作所製FC-50(D=50mm,F8フローライト屈折)
撮影機材
 カメラ
  ・BITRAN BJ-41L 冷却CCDカメラ+IDAS製TypeVフィルター
  ・Nikon D70 デジタル一眼レフカメラ 2台
   (うち1台は、ローパスフィルターを光映舎製Hα透過性に改造)
 使用レンズ
  ・Ai AF Zoom Nikkor 80mm-200mm F2.8D
  ・AF-S DX Zoom Nikkor ED 18mm-70mm F3.5〜4.5G
 撮像PC

  ・SHARP Mebius MN-7760(CPU,HDD換装品)
 電源
  ・現地レンタカーの車載バッテリーを活用

Hawk Head (Bouddi National Park)での観測風景
 海岸を見下ろす、半島の崖の上“Hawk Head”。
 未舗装の悪路をのぼり詰め、赤い岩盤の上に陣取った。
 連日、月明かりの中での撮影。
 夜露との闘い。
 久々の南半球の星々の眺め。
 太古の昔からの地球の営みを感じさせる雰囲気は、
 やはりオーストラリアの魅力。

 
観測地周辺地図はこちら
【冷却CCDカメラ BITRAN BJ-41L と 一眼デジタルカメラ Nikon D70(改) による撮像】
アンタレス付近の星雲・星団
2005.8.17
さそり座の赤い心臓アンタレス。その周辺には色とりどりの散光星雲や暗黒星雲が入り乱れる。球状星団M4も華を添える。
BJ-41L,80mmにて撮像。
エータ・カリーナ星雲(BJ-41L +105mm)
2005.8.13
満月の4倍もの視直径をもつこの星雲は、肉眼でも良く見える。小型の双眼鏡があれば、暗黒星雲によって裂かれた独特な形が良くわかる。
BJ-41L,105mmにて撮像。
ω(オメガ)星団2005.8.13
ケンタウルス座にある、全天で最大の球状星団。日本国内でも低空に確認することが出来るが、オーストラリアでは肉眼でもその形が分かる。BJ-41L,200mmにて撮像。
エータ・カリーナ星雲
(BJ-41L +200mm)

2005.8.17
長焦点でとらえたエータ・カリーナ星雲。暗黒星雲が複雑に入り乱れている様子が良くわかる。
BJ-41L,200mmにて撮像。
大マゼラン雲2005.8.14
我々の銀河系の伴銀河と考えられている。中央の棒状の部分は良く目立つが、全体としては淡い。少しの光害でもその見栄えは失われてしまう。散光星雲タランチュラ星雲の形は、双眼鏡等で楽しみたい。この星雲の近くに、1987年2月、超新星1987Aが出現。筆者の初めてのオーストラリア訪問時も良く見えていた。CCDカメラでは80mmでも収まりきらない。
BJ-41L,80mmにて撮像。
エータ・カリーナ星雲
(Nikon D70改 +200mm)

2005.8.12
Nikon D70(改)にED系ズームレンズを装着しての撮影。その6コマを加算コンポジット。今回の渡豪,本機材での撮影でのファーストショット。星雲の期待以上の写りの良さに歓喜。撮影後ただちにモニターで写り具合を確認できるのはデジカメの強み。
タランチュラ星雲2005.8.14
大マゼラン雲の片隅にある、巨大な散光星雲。“毒グモ”に例えられるその形はまさしく言い得て妙。
BJ-41L,200mmにて撮像。
小マゼラン雲2005.8.13
大マゼラン雲に比べると、その存在はやや控えめ。光芒も淡く、光害地では非常に見えにくい。ただしそのすぐ脇にはNGC104という球状星団があり、かなり目立つ。ω星団に次いで2番目に大きいもの。BJ-41L,80mmにて撮像。
Jewel Box (宝石箱)2005.8.15
画像右上の輝星は、みなみじゅうじ座β星。そのすぐ脇にある小さな散開星団が、通称“Jewel Box”。宝石箱の異名通り、小さなダイヤモンドの粒を散りばめたよう。小望遠鏡で拡大して楽しみたい。
BJ-41L,200mmにて撮像。
NGC5128(ケンタウルス座A)2005.8.15
ケンタウルス座にある電波銀河、ケンタウルス座Aとして知られる。中央部を暗黒帯が横切っている。

BJ-41L,200mmにて撮像。
さそり座付近の銀河2005.8.12
月明かりの中、銀河の撮影に挑戦。オーストラリアの空の抜けの良さは素晴らしく、月明かりの中でも銀河の流れがよく分かる。さそり座の頭部付近に月があり、さすがに長時間の露出はできなかった。
ユーカリの森に沈む月とさそり座2005.8.13
上弦を過ぎた月が沈むのを待つ。銀河の流れは見えるが、月明かりの中では長時間の露出ができない。ユーカリの森のシルエットの雰囲気は独特。
沈むさそり座を望む2005.8.17
一番のお気に入りの観測場所“Hawk Head ” にて。アンタレス付近の散光星雲の撮像を終え、沈み行くさそり座を見送る。満月に近くなった月の光芒が眩しいほど。
観測風景
沈むさそり座を望む Part2
2005.8.17
撮影機材と沈み行くさそり座との2ショット。高橋製作所製P-2赤道儀に撮影機材を載せている。筆者の渡豪時の定番システムとなっている。デジタル機器での南半球の天体撮像は今回が初めて。
みなみじゅうじ座の下方通過2005.8.18
現地の冬の経験は初めて。南十字の下方通過が見られるかどうかは微妙な南緯。水平線上を右から左へと動いていく姿に感激。さすがにγ-Cruの肉眼での確認は困難であった。
Hawk Head より カノープスを望む2005.8.18
“Hawk Head ” は、海に突き出た半島の上。海を見下ろす崖っぷちが一番見晴らしが良かった。夜半、水平線の上にカノープスが昇る。日本と違ってさすがに明るい。

南天の銀河はこちら

南天の星雲・星団はこちら

南天の星景はこちら